ナビゲーションシステムを使った副鼻腔炎の手術
荻野です。7月初旬になりますが、耳鼻咽喉科短期滞在手術研究会のランチョンセミナーで、「ナビゲーションを使用したショートステイサージャリー」という題で講演をさせていただきました。
日頃から手術に積極的に取り組まれている耳鼻咽喉科の先生方を前に話をするのは大変緊張しましたが、ナビゲーションの実際の使い方、運用、重要性などについて話させていただきました。
内視鏡下副鼻腔手術 (Endoscopic Sinus Surgery: ESS)において、最も大切で難しいことは、「副鼻腔の中のどこを手術しているのか」を常に把握することです。複雑な立体構造を持つ副鼻腔の中をカメラで捉えた画像を見ながら手術をしていくことは、案外難しいものです。そこで近年はナビゲーションシステムを用いた手術が増えてきています。まさにカーナビと同じようなもので、今どこにいるのかがリアルタイムで表示されるシステムです(どこを右折しなさいなどの経路案内はしてくれませんが)。
ビデオはナビゲーション機能付きの手術器械を使って前頭洞を手術している時の画像です。
手術器械の先が脳や眼といった副鼻腔のまわりの傷つけてはいけない重要な場所にあたっていないことがわかります。
当院では3年前からナビゲーションシステムを導入し、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)の全例に現在使用しています。
実際、アメリカ耳鼻咽喉科学会からの報告ではナビゲーションを使うことで合併症の発生率が下がったという報告があり、鼻の中にポリープが充満している場合などはナビゲーションを使うことが推奨されています。
最近増えてきている好酸球性副鼻腔炎は副鼻腔の中が鼻茸(ポリープ)で充満していることも多く、ナビゲーションを使った手術はむしろ必須と言えると思っています。
ただ、カーナビを信じて走って道を間違えてしまうことがあるように、ナビゲーションも器械であり、時にずれてしまうことがあります。解剖の理解、手術技術の向上が何より重要で、頼りきってしまうのは禁物です。このことを肝に銘じながらも、最新の手術機器は惜しみなく導入し、より安全で高度な手術を行っていきたいです。