発声障害患者会 総会
耳鼻咽喉科領域は、耳、鼻、ノドの病気を扱う科です。耳が聴こえない、または鼻水はなづまり、という症状については、理解されやすいのですが、声が出しにくい、という症状については、意外に理解されにくい面があります。風邪に伴う急性喉頭炎や声帯ポリープなどは、それでも比較的よく知られていますが、声帯そのものには全く異常がないのに神経伝達の異常により声が出しにくくなる「痙攣性発声障害」という難病があります。この病気では必ずしも常に症状が出るわけではなく、接客の時や人前で発表などをする時だけ声が出にくくなったり、その一方で比較的リラックスしているときは症状が出なかったりするため、精神的な緊張などによるものと誤解されることもあります。そういった方々が声の不調を感じて耳鼻咽喉科に受診されても、明らかなポリープや腫瘍などは見られず、症状が変動するため、異常なしと診断されたり、精神的な緊張のせいであろうと言われてしまうことも少なくありません。非常にまれな病気と言われており、耳鼻咽喉科医が日常診療で遭遇する機会は少ないため、診断が難しいのはやむを得ない面もあります。
前置きが長くなりましたが、その難病をお持ちの全国の患者さん方が集う会が年に一度開かれます。その会の名は、「SDCP発声障害患者会」という会で、6月17日土曜日に東京、新宿で開催されます。私自身も何回か参加させていただいており、診察室を離れて直に患者さん方と触れ合う貴重な機会です。元々は、この病気で困っておられた一人の患者さん(現在患者会の代表を務めておられます)が、同じ病気で苦しんでいる方に、偶然ネット上で知り合ったことがきっかけで徐々に輪が拡がっていったそうです。現在では厚労省にこの病気の周知のために陳情に行かれたり、写真のようなリーフレットを学校などに配布したりして、この病気の周知に努めておられます。初めはたった一人の孤独な苦しみだったものが、波動の様に同じ境遇の方々と共鳴して大きな波となり、今では人知れずこの病気で苦しんでおられる方々の支えともいえる存在になっています。3年前の当院が主催する耳鼻科医向けの研究会にも、患者さん代表としてご自身の体験を語っていただき、出席の先生方からも反響がありました。
私たち自身も患者さん方とこのような形で触れ合えるのは、非常に貴重な機会です。立場は異なりますが、出席されている方々の前向きな姿に触れると、我々自身も頑張らねばという気持ちになります。もし声が出にくいということで、お悩みの方がおられましたら、この会に出席されてはいかがでしょうか。実際に手術や注射を受けられた経験をお持ちの方も多いですし、実際のお話を伺える良い機会だと思います。私も夕方から出席予定です。