美しい医療の追求 ー新年に寄せてー
新年あけましておめでとうございます。今年も皆様にとって素晴らしい年になることをお祈り申し上げます。
おかげさまで「ひろしば耳鼻咽喉科」を開設してから20年が経過しました。当初は耳鼻咽喉科一般の外来診療としてスタートしましたが、2010年8月に現在の場所に移転し、「京都みみはな手術センター・一色記念ボイスセンター」を設立、有床診療所として1泊2日の短期滞在手術を行う体制となりました。それから数えても9年余り経過しています。
多くの方のご協力を得ながらこれまで無我夢中でやってまいりましたが、今までを振り返り、今後どこを目指していくのかを改めて時間をかけて考えました。
まず、現在の診療体制は、もはや廣芝が個人でやっているのではなく、数多くの先生方に参画していただいています。また診療内容についても、「中耳難聴外来」「音声外来」「嗅覚・副鼻腔外来」といった、かなり専門化された内容の診療となっており、個人がやっている「ひろしば耳鼻咽喉科」という名称が不適当であると考えはじめました。ご縁があり、一色先生、田邉先生、岩永先生という京都大学の大先輩から教えを受ける幸運に恵まれました。また、私と年代は近いですが、京都大学で研究、臨床の分野で活躍されている中川隆之先生も昨年4月より当院に入職されました。中川先生は、鼻内内視鏡手術の指導的立場として活躍され、この10年指導をいただいております。諸先生方と一緒に医療を実践する過程で、医療技術のみならず哲学を学び、さらにそれを後世に伝えてゆく、ということも私たちの使命であると感じております。これまでさまざまな名称が入り乱れておりましたが、京都という場所で、先輩方から受け継いだ医療を実践し、伝承・発展させてゆくという意味を込めて「京都耳鼻咽喉音聲手術医院」という名称とさせていただきたいと思います。
また、当院の目指す医療についても熟考しました。耳・鼻・音声、いずれも機能の改善を目指して、手術を中心とした治療を行っています。機能改善のための手術は、非常に繊細な操作が必要となり、また同時に術者の「考え方」「哲学」も重要です。以前、耳の手術について、ブログにも書いたように、術者にとってやりやすい手術というよりも、手間がかかったり困難であったとしても、患者さんの機能改善のために最善の手術を行う、という「考え方」こそが重要です。単に定型的な手術をこなす、のではなく、プロフェッショナル意識を持ち、その患者さんに合わせて最善を尽くす。その点、手術がうまいといわれる先生方は、妥協がなく、純粋に視覚的にも「美しい」手術をされます。また、そういった先生方は、執拗なまでにこだわりを見せることもあります。岩永先生の言葉で印象に残っているのは、「確かにここまでこだわらなくとも、結果としてうまくいくことも多い。しかし、何十人かに一人、そこまでこだわらなかったからうまくいかなかった例も経験している。だからこそ、自分なりにここまでやる、という美意識を持たねばならない」ということです。この程度で十分だろう、という考え方ではなく、芸術家のように自分の目指すことに妥協しない、という姿勢が必要であることを学びました。イチローや大谷選手、闘う哲学者ともいわれるボクサーの村田諒太氏など、スポーツの世界でも一流の選手ほど自分なりの哲学を持っています。私自身はいまだ修行中の身でありますが、「一流」の先輩方の医療を受け継ぐならば、まずはその考え方を理解し、自分なりに昇華させることが必要であると考えました。さらに、このような医療を提供することで、皆様の人生をより豊かなものとし、幸せを感じていただく、ということこそ最終的な目標です。それらを全て含めたものを、「美しい医療」と定義しました。皆様にとって聞きなれない言葉だと思いますが、今後私たちは、この「美しい医療」を追求し、世の中に貢献してゆきたいと考えています。
そこで、今回「京都耳鼻咽喉音聲手術医院」のブランドアイコンを作成しました。字体や色調の美しさだけでなく、漢字が感じさせる「伝統」の雰囲気、「オンリーワン」を目指す京都大学の校風など、様々な意味が込められています。順次皆様の診察券を、このロゴが入っている新たなものに交換させていただきます。また院内の雰囲気づくりも少しずつ丁寧に仕上げてゆきたいと思います。私たちが目指す医療、方向性を感じていただければ幸いです。
本年もどうかよろしくお願い申し上げます。