あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
本日より当院も診療を開始いたしました。心を新たにして診療、手術にあたりたいと思います。年頭にあたり、当院の今年の課題や目標を述べさせていただきたいと思います。
①耳の領域について
日本は、高齢化社会から超高齢化社会に突入しつつあります。最近では年齢以上に若々しい方が多く、70歳代でもお仕事を続けておられる方も珍しくありません。一方、身体が若く維持できていても、耳は休みなく音を聴いているため、やはり年齢による影響は確実にでてきます。これを補うために補聴器のフィッティングを行う、補聴器外来を開設する予定です。補聴器は眼鏡ほどには便利なものではなく、装用してすぐに快適に使いこなせるわけではありません。詳細は追ってお知らせいたします。
また、中耳手術12000例を超える経験を通して得られてきた岩永先生の知見や技術、考え方を、引き続き少しでも多く修得すると同時に、耳の内視鏡も併用しながら、手術成績の向上に努めたいと思います。
②鼻の領域について
荻野医師が鼻科手術部門長を務めており、嗅覚・副鼻腔外来も担当しております。国内の嗅覚研究に携わる先生方との意見交換や、海外への学会出席・発表も精力的に行っており、今年も海外を含め複数の学会に出席予定です。実際の手術では、ナビゲーションシステムや3Dカメラを用いた手術手技をさらに研鑽し、好酸球性副鼻腔炎の制御、嗅覚の改善の成績を向上させたいと思います。特に学童や中高生において、鼻症状がどの程度睡眠障害に関わっているかについても、研究しております。
③音声領域について
一色先生が開発し、当院でも手術に使用している「チタンブリッジ」が正式に厚労省より認可されました。以前からチタンブリッジを使用することによって、手術成績が劇的に良くなることは周知の事実でしたが、厚労省からオフィシャルに認められることで、近い将来、海外での使用も可能になるということです。来月には京都大学耳鼻咽喉科と共催で、ワークショップを開催し、海外の耳鼻科医が30名ほど当院に実際の手術を見に来られる予定です。一色先生、田邉先生が開発・体系化された甲状軟骨形成術は、当院では年間約100例前後行っており、恐らくは世界においても手術内容、症例数ともに随一であろうと思われます。さらなる努力により手術成績の改善を図りたいと思います。
また当院では一昨年より松山赤十字病院の田口亜紀先生にお越し願って、音声治療についても対応できる体制になっております。今年は音声治療の経験が深い言語聴覚士が常勤となり、田口先生と協調しながら音声治療にあたるよう、より充実した体制を取る予定です。手術だけですべてが治るわけではなく、術後に音声治療を行ったり、または手術よりも時に効果的なこともあり、有効な治療です。
更に、昨年より常勤で勤務している東家医師が、鼓膜再生でも使用している多血小板血漿(PRP)を用いて、声帯萎縮や瘢痕に対して治療効果があるかどうか研究に着手しております。まずは再生医療法に沿って、大阪大学再生医療等認定委員会に膨大な資料とともに申請、昨12月に審査を受け研究について妥当であると認定されました。今年は、従来では治療が難しかった声帯萎縮などの疾患に対しての、試験的治療を開始する予定です。
また医療以外についても、待合室トイレの改装など院内の環境を整えたり、より患者さん方にとって快適な施設づくりを継続してゆく予定です。一昨年より始まった院内の患者さん向け講演会を今年も2回ほど行う予定です。
至らぬ点も多々あると思いますが、少しずつでも改善し、前進してゆきます。よろしくお願い申し上げます。